入院患者を毎日観察するのも、大変興味がある。広告屋であった自分が、よく口にした言葉に
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「商品に興味があると思っているのは、広告主。
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どれくらい広告を露出してくれるかは、流通
が。
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しかし、CMを視るものの、なによりもの関心は、人間です。」
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「広告は、製品と人間の新しい関係創りです。」
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「人間が、一番関心があるのは、他人のスキャンダル。とりわけ、羨ましいと思える人物の
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失態あり、 所詮同じレベルだと確認出来たときの安心感なのだ。」
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「感動で泣くよりも、 滑稽なドジで笑いあうやつを好きになったほうがいい。」
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「泣きは創れるが、笑いはこらえ切れない。」
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まあ、笑いの中には、教養も家庭環境もあぶり出されるから、
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学生のカップルには、いつも言ってやっているのが、「寄席をデートコースにいれてみろ」と。
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だから、クライアントは、 感動型ドキュメントの60秒CMよりも、
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15秒の吉本系タレントの味で、軽妙なCMを望むのだろうか。
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さて、テーマを戻そう。 パジャマ姿でもう何日も過ごしている。正直、実に軽快である。
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通常は、ワイシャツの胸には、身分証明書やら、クレジット・カードやら、
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パスネット・カードを入れたカードケースで膨らみ、
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背広の内側には、ザウルスを入れ込み、アウトポケットには電話線コードを。
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腰にはドッチーモの N821iをピストルのようにベルトで固定し、
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或るときには、秘かに万歩計までつけている。ズボンには、小銭だらけのウォレット。
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ヒップには、2種類のハンカチと、街で受け取ったポケティッシュ。
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男は、ハンドバッグを持たない分、多くのポケットに武器?を持つのだ。
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ところが、入院ファッション?は、サンダルとパジャマ。
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それに外来患者と接する場所へのガウンくらいなものだ。
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ポケットに入れているのは、せいぜいがテレフォンカードだけである。
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であるから、身体からあたかも鎧を外したような軽快さである。
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おっと、また、テーマを戻そう。そのパジャマ姿でいると面
白いのは、
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誰もが、同じような病気の怖れがあっての人間同士であるから、情報交換の場になるものの、
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職業も身分も見えないことである。語らないままである。サウナにいる者同志のようなもの。
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スキーゲレンデでのコーヒー・ショップでのような関係。
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ある共通のユニフォーム姿でいる、どこか許せる関係である。
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だから、推察することに、人間観察をすることで、
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勝手に人物像を作り上げていくちょいとしたゲーム感覚が、大変面
白い。
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新聞の読み方、テレビ番組の見方、見舞客の姿(これは、外界の関係をそのまま持ち込んでくる)
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から、夫妻の何でもない会話から、生活ランクが見えてくる。
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肉親の、兄弟の批評、退院後の楽しみ、ナースとの接し方、配膳や掃除の人へのひとこと、
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朝の目覚めの早さなどなど、山田太一や橋田寿賀子ドラマもどきのにわかシナリオライターになる。
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「スライス・オブ・ライフ」をピックアップしたり、描けなければ、
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人間と製品との新しい関係づくりが見せられないからだ。
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病室も外来の診察待ちの長椅子でも、人間観察には絶好の時間である。
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病院のパジャマは、肩書きを消してしまう。
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まだ、似た場所がどこかにあるなと思い出せないでいたが、そうだ、ゴルフ場の風呂場もそうだった、
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うん、そうだった。ゴルフウエアから、普段の洋服に着替えていくにつれ、
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上下関係があぶり出されて、次第に敬語の回数が増えていく。
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スコアが悪いと苦虫を潰した顔が、段々と、名刺の肩書きの顔に戻っていく。
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恐らく、運転手がドアを開ける頃には、スコアカードは心の中で破られているのだろう。 |
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