例によって広い方の朝風呂に入ってから、昨日の角田浜を抜け、夕日がきれいだと言う日本海夕日ラインを少し走り、佐潟水鳥・湿地センターに寄った。

 ラムサール条約に登録された湿地だという。潟というのは、水源は、河川から流れて来るものではなく、沸き水や雨水が貯まったもの。この佐潟は、栄養塩類が高いために、野生成物の生息地として、渡り鳥の飛来地としても重要な砂丘湖である。湖面 は、ちょうど満開の蓮が見ごたえあった。センターの館内には、観測スペースが設けられ、環境庁というプレートが付いた観測望遠鏡がずらりと並んで、接眼すると手に取るように水鳥が見られた。おそらく湖面 にいたのは白サギではなかっただろうか。冬期には、瓢湖と同じく何万羽という渡り鳥が群舞していることだろう。栄養価の高い水質がそうさせる。湖の水質ではないが、あの中国長江の三峡ダムが大変らしい。既に2/3が完成して発電も始まったらしいが、多くの街や村を飲み込んだ結果 、水面上に大量の生活ゴミが浮遊しているという。2009年に完成するまでに、環境汚染はどういう手を打つのか。急激な車社会に入り、大気汚染や、この水質汚染が進めば、我が国からの企業誘致にもブレーキが掛かるに違いない。水のきれいな国に、かつてはフィルムメーカーありといわれたが、記録媒体の進展に伴って、いまきれいな水を必要とする半導体技術がその国の産業を担う。我が国では、ビールが水源地を競い、そのアピールポイントはウイスキーにまで及んでいる。いずれにせよ、健康のためにも環境はこれ以上悪くしたくはないものである。

 途中、たばこ畑を通 った。新潟には多いという。たばこの葉畑を見たのは初めてだった。栽培農家も徐々に減反しているという。禁煙の場所が年々拡大していく状況ではやむを得ないとはいえ、停車して写 真に収める気持ちは複雑だった。


 一方、自然の有り難さを体験しようと、本日は、新潟空港近くの荘輔菜園に行って、全員で野菜を採ることにしている。実際に見てその広さに驚いた。荘輔さんは朝5時に車でここに来て、畑仕事をして健康ランドのサウナで汗を流してから朝食だそうだ。週間天気予報がいつも気になるという。自然は実に素直だという。しっかりと手をかければ、きっちり季節に実るからだという。裏切らないから、手がぬ けないという。ペットや子供以上に可愛いいとウインクする。毎晩のビールのつまみに大量 に食べる枝豆から、いんげん、白菜、キャベツ、とうもろこし、人参、大根、里芋、じゃがいも、薩摩芋、トマトにキウイ、無いものがないほどである。好きなものを自分の手で採って東京に持って帰れというではないか、U夫妻も我が家も目の色が変わった。

 真直ぐでヒゲのないだいこんが開発されたことをTVで知った。高齢化の進んだ農家にとって、大根を引き抜くのは大変力の要ることなのだ。フリーダムという名の、イボのないきゅうりも、サカタのタネが開発したという。広島が本拠地であるベーカリーのアンデルセンでは、東京ドーム40個分の広大な農場を持ち、社印教育の場にしているという。昔、リクルートでは、盛岡の安比高原で、社員に乳牛の乳搾りをさせ、チーズを創らせていた。それをお得意様に季節の贈り物にしていた。最近は一般 にレンタル農園が盛んである。規制緩和で農業の株式化が可能になったこともあって、リタイアした世代が、背広を脱いで鍬を持つ。「帰農」で田舎に第2の人生を過ごす人も増えてきた。都会の空気が汚れている、食品添加物から逃れたい、星空を眺めたい、土まみれになりたい、四季を感じたい、そういう思いが「帰農」されるようだ。リゾートの青い海よりも、緑の多い山ふところがいいようだ。釣り糸を垂れる「サンデー毎日」よりも、「晴耕雨読」という言葉は、どうやら、60才になると贅沢な過ごし方でもあるのだ。

 手持ちできるだけの量の野菜を採って、S宅に帰った。荘輔さん曰く「東京人は、本当の空気吸ってないね、ははは。やっぱ、あんまりいい生活してないわ。じぶんたちにとっては、当たり前のことをこんなに大喜びしてくれるなんて。なあ、美子」

 「東京国と日本人」という話になった。日本の殆どの雑誌は、東京人が記事を書いて東京感覚で作り上げている。どこかがズレてくるんだと荘輔さんは力んで言う。その通 りかも知れない。昔、名古屋に転勤していたとき、雑誌の「クロワッサン」も「ヴェリー」も、名古屋のお嬢様方はピンと来ないわと、新幹線で東京まで出かけていっていた。恐らくは、仙台や広島の読者も同じようだったろう。紹介された店は、地元の情報ではないという不満が高まった。「東京国」が、すべての基準だというのはおかしなことだとその隙間を突いたのが、角川の「○○ウオーカー」で、主要都市で編集され、いまや、台北ウオーカーもある。

 陽を浴びて畑でひさしぶりに中腰になっていたせいか、帰りは東京まで4人とも疲れて眠ってしまった。これで、1年間に冬、夏の2回に亘って新潟に行ったが、なんと見どころの多い県であるかと再認識させられた。「新潟の者は、PRするのが下手だからねえ」荘輔さんの口癖が聞こえてきそうだった。佐渡に行くのはさて、いつになるか、愉しみである。

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