ハーバーフロントセンターのビルの中からロープウエイでセントソーサ島に渡 ると、37mの巨大なマーライオンタワーが建っている。このシンガポールのシ ンボル、マーライオンは一匹ではない。3年前に教えられたマーライオンの数は、5頭だった。クラークキーへ入るシンガポール河口に立つのが、絵葉書でもお馴染みのマーライオンで8m。2002年には海寄りに120m移動し、親子?2 頭になった。マーライオンとは、マーメイドの下肢をもつライオンであるから、 シンガポールのライオンは立っていて、日本のライオンは座っている。銀座四丁目のライオンを、年配の男性は、サッポロビヤホールの「ライオン」だと思い、女性は反対側角の三越前のライオン像だと思う。今でこそ、角の待ち合わせ場所は日産ショールームとなったが、昔は、「ライオン」違いで随分とすれ違いがあった。
 そもそも三越本店のシンボル、青銅製のライオン像は、ロンドンのトラファルガー広場にあるライオン像に感動した当時のトップが大正3年に設置したもの。その東京銀座と2001年、姉妹提携を結んだのがシンガポールの中心街、オーチャードロードである。18世紀までは、ナツメグの果 樹園(オーチャード)だったところだ。さしずめ、銀ブラではなく、オーチャブラかお茶ブラか。 昔の「銀ブラ」の常連は、三越・日産の東側を歩くのは野暮だとして、西側しか歩かなかったそうだ。たまにしか買い物に来ない者たちが、ものほしげに松 屋から松坂屋へ流れ、夜店の出た側を歩いたのだという。いまは、西五番街、みゆき通 りなど裏のショッピングロードに厚みをつけて、和光・三愛の西側の ほうこそ、アップルからカルチェ、ザ・ギンザへと、人通 りは逆転した。銀座と提携したオーチャードロードの南側には、伊勢丹と高島屋が並んでいる。

 埠頭からシャトルバスでギャラリアスコッツウオークに出た。散策するには20 分もなかったが、首筋を守る日除け付きキャップを買いに出た。暑い国なら何処にでも売ってるだろうと高をくくったが見つからない。こんなことなら、通 販 で買っておけば良かったと後悔した。
 オーチャードの高島屋に入る。日本人社員がスポーツ用品売り場で見かけましたと、わざわざ3階まで案内してくれた。 こんなこと、海外の日本デパートでも、国内でも経験したことがないサービス である。結局、売り場にはなかったが、納入業者にまで電話して販売店を訊いてくれた。ゴルフショップに納入していることが判ったが、その場所は遠かっ た。出港の時間が迫っていたので、その親切にお礼を言った。彼の胸札には INOUEとあった。3年前サンディエゴで受けた、あの「ノードストローム」での サービスを思い出した。
 今回は、ほんの数分のサービスであったが、とても心 に残った。帰国したら、銀座線は三越駅ではなく、日本橋駅で降りることにな るなと、妻の顔を見ると、頷いていた。 「井上さん、目的のキャップは買えませんでしたが、贔屓のデパートは変わり ましたよ、貴方のホスピタリティで。有り難う御座いました」
 シンガポールで、我々夫婦は、ライオンからローズちゃん人形へ心は動きまし た。


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