SONY MUSIC DIRECT inc.の会報誌「The CD Club」の中で、演出家・宮本亜門さんが
"ときあかり"にコメント寄せてくださっています。それを、こちらで特別 にご紹介いたします。
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Aricoさんの曲を初めて聞いたのは、京都の学生たちと「伊藤若冲」の研究会をしたときだった。若冲好きのAricoさんは、是非と名乗りをあげてくれ、ミニコンサートを開いてもらえることになったのだ。会場は半分野外。しとしとと雨が降り続ける夜だった。拍手に迎えられAricoさんが登場し、演奏が始まった瞬間、空気が変わった。聴く者の心が静まり、凛とした震えが、一つ一つの音の間に生まれた。そしてその音は、雨が降る湿った空気にまで染み入った。
「ああ、この感覚、体験したことがあったぞ」
私は思わず呟いた。それは沖縄の民謡歌手、古謝美佐子さんが、夜、海辺でサンシン片手に歌ってくれたときだ。そのシンプルな音は自然の中に漂う精霊たちと絡み合い、音楽が大きな渦となって動き出したのだ。私は驚いた。虫や精霊が蠢き、風や海が音楽を聴いているのを感じた瞬間だった。私はAricoさんの演奏に同じものを感じた。しとしとと降る雨は愛しさに変わり、雨粒一つ一つが美しく輝き、生きとし生けるものに、潤いの水を届ける神々しさに満ちていた。その鍵盤に置かれた指が奏でる一音一音が、あらゆるものを繊細で丁寧に、そして愛らしく際立たせてくれる。私はそんな時、大きな深〜〜い深呼吸をし、それを細胞まで行き渡らせる。これこそ生きている実感を 感じられる幸せの時だ。
Aricoさんの音楽にはそんな、正直なピュアな世界がある。もちろん、エリック・サティのようにヨーロッパの品格も漂わせるAricoさんだが、私にとってのAricoさんの驚くほどの魅力とは、やはり自然と人間の交流に深くかかわれることが出来る人であるということだ。だからAricoさんの曲を聞くと、自分のナチュラルな部分がゆっくりと開いていく。癒しというより、本来の優しい自分を取り戻してくれる。我々は生まれながらにして何ひとつ欠けていない。生きていることで充分完全なのだという安心感がそこに満たされている。世界中の人が彼女の曲を聞いたら、戦争なんて無くなるのに… そんなことを思いながら私はAricoさんの曲を全身に浴びている。
宮本亜門 PROFILE
MIYAMOTO AMON
演出家
1958年1月4日生まれ・O型 東京都出身
出演者、振付師を経て、2年間ロンドン、ニューヨークに留学。 帰国後の1987年にオリジナルミュージカル「アイ・ガット・マーマン」でデビュー。翌88年には、同作品で「昭和63年度文化庁芸術祭賞」を受賞。ミュージカルのみならず、ストレートプレイ、オペラ等、現在最も注目される演出家として、活動の場を広げている。2004年秋には、ニューヨークのオンブロードウェイにて太平洋序曲を東洋人初の演出として手がけ、2005年同作はトニー賞の4部門でノミネートされる。 2007年1月5〜28日ミュージカル「スウィーニートッド」を日生劇場で上演。 |
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